「100万$ナイト」
1979年リリース。甲斐バンドにとって2作目のライブアルバム。
「HEROヒーローになる時、それは今」「安奈」と立て続けにヒットを飛ばし、ついに頂点に立った勢いの詰まった、傑作。
- おすすめ度=96点(ロックのライブ盤としてもトップクラス)
- リピート度=90点(2枚組だけど、通して聴きたい)
- 名盤度=98点(捨て曲なし)
- 好きな曲・・・どれもすばらしい
- 「きんぽうげ」:最初にこのライブ盤から入ったので、あとでスタジオ録音版を聴いた時に、えらく物足りなく感じてしまった。それくらい熱い名演。しばらくこのバージョンが甲斐バンドライブオープニングの定番だったので、初めて実際に会場で聴いた時、ほんとに鳥肌が立った。
- 「翼あるもの」:こちらも、スタジオ録音版がかすむ熱い名演。臨場感たっぷりで、ジャケット写真を見ながらまだ見ぬロックコンサートの熱気を思い浮かべたものです。
- 「最後の夜汽車」:おまけのシングルに入っていて、まさにアンコールナンバー。スタジオ録音版とは間奏に入るタイミングが違うほか、印象的なブレイクも入って、ライブならではの‘活きた’アレンジ。このバージョンはこの時期にしかないのでは。
- 総評:当時僕は中学生。我が家に初めて大きなステレオセットがやってきて、お小遣いのほとんどをレコードに費やしていた。でも、実際にはアルバムを買えば月の小遣いは吹っ飛ぶわけで、何を買うかには慎重にならざるを得ないわけですね。で、このアルバムは友達に借りました。僕にとって初のライブアルバム体験。収録曲も知らないものばかり。針を落とせば、しばらく続く開演前の客席の声とサウンドチェックの音(けっこう長い)。そして、流れてくるギターカッティング(ギャーギャッ、ッギャッ、ギャーギャーギャッ)、大歓声(むしろ悲鳴)と手拍子・・・。うぉー、これがロックか!!てなもんですよ。バラエティーに富んだ楽曲、ハイテンションな演奏、ドラマティックな構成(ロックバンドで途中にアコースティックセットを入れる構成というのは、当時珍しかったのでは)が素晴らしく、僕にとってのライブ構成のお手本となってます。ギターの音がしっかり前に出てきている点でも大好きな1枚。あ、もちろんそれからは、甲斐バンドは全て買い揃えました。
沢田研二「許されない愛」
ザ・タイガース解散後、ソロデビュー最初のシングルは「君をのせて」という、優等生的なバラードで、これで軽い肩ならしの後、満を持してリリースしたのがこの曲。1974年リリース。
- 名曲度=90点(詞・曲ともにインパクト大)
- 普遍度=70点(さすがにアレンジが古い)
- カラオケ度=90点(本気で歌わないと)
- 総評:歌詞はいきなり‘忘れられないけど 忘れようあなたを めぐり逢う時が 二人遅すぎた’・・・つまり、人の彼女(あるいは奥さん)を好きになっちゃたわけですね。2番では‘帰るところのある あなたなら遠くで 僕は幸せを ひとり祈るだけ だけど命 かけた愛なら 今すぐあなたの もとへ戻って どこかに奪って 逃げて行きたい’・・・と絶叫するわけです。G.S.時代は少女マンガのような恋の歌を歌って不動のアイドル人気を獲得していたジュリーの、イメージチェンジ戦略としては完璧なんじゃないかしらん。一歩間違えば不倫のドロドロソングになるところを、あきらめさせることで純愛の一線を保ち、それでもなお‘奪ってしまいたい’と葛藤する姿で、男性ファン獲得をも視野にいれてるわけですな。歌詞もメロディーもシンプルで、余計な描写や仕掛けは一切無し。アレンジも基本はシンプルなバンドサウンドなんだけど、ブラスを全面にフィーチャーして、けっこう派手なブラスロックに仕上げてて、なかなかにワイルドでエモーショナル。ギターの16ビートカッティングも、とってもカッコよい。なにせ30年前の音源なんで古さは否めないけど、シンプルな曲だけにちょっとリメイクするだけで、じゅうぶんかっこ良く化けさせることができると思う。ただ、これほどの激しい情熱に説得力を持たせることができる力量とキャラクターがボーカリストに必要だけど。ラストの絶叫ロングトーンは、ボーカリストなら一度は歌ってみたいですなあ。
※この曲のヒットで、以後ジュリーはしばらく‘年上の女性に惹かれる青年’路線が定着。後に西城秀樹もこのコンセプトで「ブルースカイブルー」という名曲を歌いますが、それはまた別の機会に。
エラリー・クイーン 長編独断ランキング
かつては、クリスティと並んでどんな本屋でも数十冊は並んでたんだけどねえ。
- エジプト十字架の秘密
- ギリシャ棺の秘密
- 災厄の町
- Xの悲劇
- Yの悲劇
- フランス白粉の秘密
- スペイン岬の秘密
- Zの悲劇
- 九尾の猫
- 第八の日
クイーンは全作持ってて読破しました。初期のものは、文章がもったいぶってて(特に前半は)ちょっと読むのにしんどいところもあるけど、中盤からの推理小説的盛り上がりが素晴らしい。逆に後期の作品は、ミステリーとしては(トリックとか)小粒にはなるけど、シリーズ物の小説として素直に面白いです。なので、いわゆる本格ミステリーにあまりなじみのない方がクイーンを初めて読むとするなら、今となっては「Yの悲劇」よりも「災厄の町」のほうがいいと思いますねえ。これは普通に小説として面白い。感動できます。
中島みゆき アルバムランキング
聴きたくなる回数をあくまでも印象で判断。
- あ・り・が・と・う
- 愛していると云ってくれ
- 生きていてもいいですか
- 予感
- 親愛なる者へ
- 36.5℃
- Miss.M
- はじめまして
- みんな去ってしまった
- おかえりなさい
やはり初期のアルバムが好きだけど、ご乱心時代のアルバムも好き。一般的に人気の高い「臨月」と「寒水魚」が落ちてしまった。
レイ・ブラッドベリ「刺青の男」
その大男は暑い夏なのにウールのシャツを着、胸もとから手首まできっちりボタンをかけていた。男は全身に彫った18の刺青を、18の秘密の物語を隠していたのだ。夜、月あかりを浴びると刺青の絵は動きだし、あえかな劇を、未来の劇を、18の物語を演じだすのだった・・・。刺青の男とは、重苦しい過去と、それ以上に重苦しいかもしれぬ未来とを一身に背負った人類である。この18の短編は、宇宙旅行、原水爆、童心、宗教、宇宙人の侵入、人種問題などをテーマにした詩的で劇的な物語である。幻想と詩情にみちた最も美しい、最も異様な短編集!
(引用/ハヤカワ文庫より)
- おすすめ度=★★★★★
- 総評:僕が、読書好きの人に出会って何かを本をプレゼントしようと思った時に選ぶ一冊。ミステリーに比べ、SFにはそれほど造詣が深くはないけど、ブラッドベリに興味を持って最初に買ったのがこの本。もうかれこれ20年近く前だなあ。短編集だし、入門にはいいかなと思って。で、これが大正解。すごいですよ、この本は。思わせぶりでもったいをつけたオープニングに続き語られる第一話「草原」は、星新一にもありそうな未来生活のシチュエーションながら、結末はかなりブラック。いわゆる物質文明への批判を感じるちょっと怖い話。そして第二話が「万華鏡」。もうね、これがすごい。僕はここでノックアウト。読み終わった後の余韻たるや。突然のロケットの事故で宇宙空間に放り出された乗組員達。宇宙の闇へ四方八方へ落ちていきながら、ただひとつ繋がっている無線機で交わす会話。恐怖で叫び続けるもの、悪態をつくもの、楽しかった想い出話を語り続けるもの・・・ひとりは火星へ、ひとりは流星群へ、ひとりはなつかしの地球へ、死の闇へ落ちてゆきながら交わす会話。あなたなら何を語り、何を考えますか。
- その他、無事に帰ってきてもすぐにまた宇宙へ行こうとする男とその妻の物語「ロケット・マン」や、貧しい父親が子ども達のためにロケットに乗る夢を叶えるラストの心温まるストーリー「ロケット」(まるでドラえもんにありそうな話。泣けるのだ、これがまた)など、SFというより‘文学’と呼ぶにふさわしい短編が収録された名作です。
- ブラッドベリはほとんどの作品を読んだけど、独特ですよね。ウェットだけどクール。怖い話だけど胸にしみる。描かれる人間達が、不完全だけど憎めない、嫌な奴でも最後はいい奴かもと思えてしまう、そんな文章を書く作家です。あと、行った事もない街だけど懐かしい気分になる、そんな世界。
- この本を手に取ったのは、もちろんストーンズの名作アルバムと同じタイトルだからです。原題は違うけど。
- なぜか、ハヤカワ文庫では絶版中らしい。何を考えてるねん。つうか、久しぶりに本屋のハヤカワコーナーを見たら、古典のスペースが大幅に縮小されているではないか。いろいろ事情はあるだろうが、がんばってくれないと。