ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」

夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった……ただ一人街をさまよっていた男は、奇妙な帽子をかぶった女に出会った。彼は気晴らしにその女を誘ってレストランで食事をしカジノ座へ行き、酒を飲んで別れた。そして帰ってみると、喧嘩別れをして家に残してきた妻が彼のネクタイで絞殺されていたのだ! 刻々と迫る死刑執行の日。唯一の目撃者である“幻の女”はどこに? サスペンス小説の巨匠の最高傑作!
(引用/ハヤカワ文庫より)

  • おすすめ度=★★★★★
  • 総評:オールタイムのミステリー名作アンケートなどでも1位に輝く名作ミステリー。この原文を読んだ江戸川乱歩が、大興奮で「ただちに翻訳すべし」と絶賛した事でも有名。作者はサスペンスの巨匠として今もなお映画やドラマの原作に引っ張りだこな、ウィリアム・アイリッシュ。あ、もちろんとうの昔にお亡くなりになられていますよ。
  • 実は、10数年ぶりに再読したのです。お風呂に入りながら。いやあ、全然スジを覚えていなくて、まったく新鮮な気分でハラハラどきどきしながら読みました。「死刑執行前百五十日」から「死刑執行後一日」まで23章としてカウントダウンされながら進む構成が、もうそれだけでサスペンス気分沸騰。ミステリーとしては、犯人探しの点ではたぶんすぐにネタばれしそうなのに、そんなことより主人公たちに感情移入してしまうので、冷静に読んでいられないのです。おそらく原文もそうなんだろうけど、翻訳文も洗練されてて、まったく古さを感じさせないのがさすが。翻訳物が苦手な方にもオススメの、読み出したらやめられない名作です。

幻の女
幻の女
posted with amazlet on 06.02.26
イリアムアイリッシュ 稲葉 明雄
早川書房 (1979/08)
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