「あ・り・が・と・う」

1975年に「時代」で、見事世界歌謡祭グランプリを獲得した後、続くシングルや2nd.アルバムが伸び悩んだ中島みゆきが、起死回生でリリースした3rd.アルバム。現在まで続く‘中島みゆき’伝説は、事実上このアルバムから始まったと言っても過言ではない。特にアレンジ面での充実が目を見張り、いかに本人はもちろんスタッフがこの1枚にかけていたかがわかる充実のプロデュース。1977年リリース。

  • おすすめ度=94点(それほどドギツクなく、沁み入るような良さ)
  • リピート度=95点(中島みゆきとしてはアクが少なく、気軽に聴ける方)
  • 名盤度=94点(バランスの取れた名盤)
  • 好きな曲
    • 店の名はライフ」:いやもうほんと、この曲大好きなんですよ。なんで?と思う人も多いあっさりした抽象的な曲なんだけど、なんかいろいろ考えさせられる。行ったことのない「ライフ」という店を、とても懐かしく感じる、そんな曲。客観的な情景描写だけで時の移り変わりを描く手法は、僕の一番好きな詞のパターン。メロディー、アレンジも、さりげなく凝ったことをしていて、まさに‘調和’の一品。コーダのピアノは坂本龍一で、これもまた素晴らしいプレイ。冬になると聴きたくなる曲。
    • 朝焼け」:これも、凄く‘冬’を感じる1曲。ボサノバのリズムで、サビのメロディーもジャズっぽいんだけど、それでも中和できないほど情念あふれる歌詞が、凍てつく冬の夜明けをありありと思い浮かばせて、たまらないほど孤独を感じさせます。ストリングスアレンジがいいのだ、これがまた。
    • ホームにて」:言わずもがなの名曲。僕は別に遠い田舎から都会に出てきたわけではないけど、こういう気持ちは痛いほどわかってしまう。ましてや、故郷が遠い人なら・・・。
  • 総評:中島みゆきの1番の名盤とはけして言わないけど、たぶん聴く回数の一番多いアルバムが、この「あ・り・が・と・う」。特に冬になると聴きたくなるなあ。中島みゆきと言えば‘ふられ節’みたいなイメージがあるけど、誰にもきっと、どん底の状態を眺める自分を感じる瞬間があって、そんな冷めた客観性が実は‘みゆき節’の最大の魅力なのでは。ボーカルも、曲によってていねいに歌い分けてるんですよねえ。