ARB「トラブル中毒」

The Modsと並ぶビート系ロックバンドの雄。デビューはThe Modsより一足早い1979年。当時のロックバンドの多くが、当たり前のようにアマチュアから活躍してそのメンバーでデビューを飾ったのと異なり、ARBはレコード会社主体のオーディションで選ばれたメンバーでスタート。つまり商業的戦略により生まれたバンドなんですね。しかし時代はパンク旋風が吹き荒れる80年代前夜。デビューアルバムだけでプロジェクトは崩壊し、ギラギラした連中だけで新生ARBは再スタート。さまざまな紆余曲折と激闘の末、1983年にリリースされた6枚目のアルバムがこれ。

  • おすすめ度=96点(もしあなたがロックに興味があるなら、ぜひとも聴いておくべき1枚)
  • リピート度=96点(粒ぞろい。捨て曲なし。しかも全曲ライブでも定番になりうる!)
  • 名盤度=96点(ARBとしてだけでなく、日本ロック史に残る名盤だと思う)
  • 好きな曲・・・いやあ、全部好きですよ。
    • Do It! Boy」:ARB流パンクロックの集大成にして傑作。こういうハイスピードなビートロックに、こういうストーリー性のある歌詞を無理なく載せられるバンドなど、そうはないですよ。ラップ風の語りを交えたボーカルも石橋凌の真骨頂。もちろん僕も真似できます。
    • Give Me A Chanse」:ロックバンドの最小編成でこういうファンキーなサウンドができるのもARBの特徴。スタジオ録音とは思えないバリバリのライブ感が凄い。
    • Black Is No.1」:ARBの中では異色のヘヴィー系サウンド。パンクでもビートでもなく、まさに‘ロック’。初めて聴いたとき、ああこれがロックだなあ、こういう曲をカッコよくやりたいなあと思ったもの。大好き。
    • ピエロ」:これもARBの中では異色作。絶対にコピーしたくなるベースのリフがカッコいい。執拗なほどの田中一郎のギターオーバーダビングも素晴らしい。そして何より、抽象的ながら奥深さとクールな叙情性を持つ歌詞が素晴らしくて、この卓越した詞の力が、他のロックバンドとARBを大きく差別化しているのです。
  • 総評:繰り返すけど、1曲めからラストの大作「ファクトリー」まで、ロックアルバムのお手本のような名盤。そしてこの後、ギタリストとして、作曲家として、アレンジャーとしてバンドを支えた田中一郎が脱退してしまうんだから、ロックバンドというのは難しいですなあ。でもあらためて聞き直すと、すでにこのアルバムから、‘青臭い若者’から‘オトナの男’へ世界観は変わりつつあったんですね。そういう意味でも、節目となるべき1枚なんでしょう。

トラブル中毒
トラブル中毒
posted with amazlet on 05.12.29
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